7月29日(木曜日)メキシカンハット
朝起きたら昨夜の焚き火が完全に灰になっていた。こんなにきれいに燃え尽きたのを見たのは初めてでちょっと嬉しかった。気温が低く、皮ジャンを着込んで走り出した。朝焼けが赤い岩を金色に染め上げ、空気は清々しく最高の滑り出しだ。

まずは給油し、トロピックという町で朝食をとる事にした。町と言ってもガススタンドとレストランと、何件かのモーテルがあるだけのささやかな町だ。

ウェスタン風に飾りつけされたレストランに入ると、注文を取りに来た白人のウェイトレスは歩くと床がぐらぐら揺れるような大きな人で、とても感じ良く接してくれた。

親方はアメリカ人の太った女性を見ると興奮する。自分が太れない体質だから?私はパンケーキ、親方はフレンチトーストをコーヒーと一緒にいただいた。ガイドさんのくれた塩辛いソーセージがおいしかった。

紙製のランチョンマットには近郊の観光案内と地図が印刷されていておみやげにした。

ガイドさんと親方はベンチで一服している。タバコの吸えないエリアが多いので親方は喫煙にかなり不自由してるみたい。

ここからはフリー走行ということで、トラックの前を走らせてもらった。いつか写真で見たブライスキャニオンの奇岩が登ってきた太陽の日を受けて輝いている。エスカランテ、ボウルダーなどの森林地帯は多くのキャンピングカーを見かけた。実際、キャンプ場やモーテルも多くある。眺めが良くワインディングが心地良いせいかたくさんのハーレー乗りとすれ違い、挨拶を交わした。女性のバイク乗りはいなかったのでちょっと以外に思った。

それにしても景色が美しい。道の近くに小川が流れていて木や草が茂り、山があり谷があり。こんなところに住んでみたいと思ったけど、買い物とか大変そう。

いくつも山を越え、谷を超え、ビューポイントから下を見下ろすと、白っぽい山肌にくねくねとヘアピンガーブが連続している。地リスがバイクの前を横切る。交通量は少ないのにやたらうさぎやリスやネズミが轢かれて死んでいる。それだけたくさんの動物が住んでいるということか。ならキツネやコヨーテもいっぱいいるのだろうなぁ。

ガイドさんが「この先、山の尾根がそのまま道になっていて両側に柵も何もない道を通ります。」と教えてくれた。そんな道がほんとにあったらスゴイと思ったが、まもなく道の両側は切り立った崖に変わり、本当に柵も何もなかった!そこ走るの???すげ〜!!!道幅も狭く、遠くに目をやると空中に浮いているよう。バイクを止 めて眼下に広がるパノラマを見たときはそっと鳥肌が立った。このような道がダダで走れるなんてアメリカっていい国だなぁ!

しかし、ここから昼食をとるHanksvillまでの道のりは舗装工事の連続でノロノロ運転が続き疲れた。砂利を跳ね上げ、ハーレーに傷がつかないか、滑って転ばないか手に汗をかきっぱなしだった。しかし交通整理をするのはなぜか決まって若い女性で親方は嬉しそうだった。長い工事区間が終わって休憩できた時はほっとし た。

本場アメリカのハーレー乗りにも数多く遭遇した。多くは男性のソロで、あるときは暫く一緒に走り、休憩すると追いついて来たり、また抜かされたり、ガススタンドの場所を聞かれたり、ピースサインを交わしたりした。

山から平野部に入り、だんだん民家や牧場が増え、Hanksvillについた。とても暑い。昼食はハンバーガーとポテトとソーダ、あとチョコレート味のシェイク。親方はそろそろ肉に飽きてきて、店員に「Fish!」などと言っていたのが可哀相だった。あるわけないじゃん。でも私もザル蕎麦かお寿司が食べたいと思っていた。前から気になっていたルートビアを試しに飲んでみた。味は・・・。ガイドさんが言うには、メジャーのコーク、ペプシ、マイナーのドクターペッパー、ルートビアの他にさらにマイナー系のコーラがあるいう。名前は忘れちゃったけど。

暑くてバテ気味の体を鞭打って出発。ガイドさんだって車のエアコン入れてないんだからバイク以上に暑い思いをしているはずだし・・・がんばろう!

コンタクトの渇きが激しくて目が痛くなってきた。昼食後の道のりは、急に緑がなくなり、灰色の岩場や砂、砂漠の一本道を延々走った。対向車も極端に少なくなり、バイクは見当たらない。たまにすれ違う車に挨拶しても無視されむなしくなってきた。しかも雨までぱらついてきた。行けども行けども道また道・・・。民家もない、休憩場所もない、人も動物もいない、なんて淋しいの!もう限界だぁぁぁ、と叫びそうになったときにコロラド川の流れが見えた。おおっ、水だー!

右手にHistric View Pointという案内があったけれど、砂利道だったので通りすぎてしまったのが今思えばもったいないことをした。どんな歴史があったんだろう。

橋があったので立ち止まったが、良く見るとコロラド川の支流のダーティーデビルという川でがっくし。どおりで水が少ないと思った。しかしダーティーデビルなんて名前を付けた昔の人はさぞかしこの川を恐れていた のではないかしら。しばらく行くと正真正銘水をたたえたコロラド川がありました。「帰らざる河」をテキトーな英語で歌いながら走る。道は小刻みに曲がったり登ったり下ったりしていて、坂を登りきってすぐものすごい下り坂だったりするので気を抜けません。でも道路標識に従っていれば間違いなし。とても分かりやすくて 親切な標識達です。

95号線のFry Canyonで休憩に立ち寄ったガススタンドには日本語で「女性用トイレ」の張り紙がしてあってちょっとびっくりしました。こんなところにまで・・・、という感じです。

店にはインディアンジュエリーがびっしり並んでいて、安いな〜と思っていたのですが、結局何も買わず。オレンジジュースを飲んでいると、羽音がするので見てみるとハチドリがハチドリジュース(?)を飲んでいました。鳥なのに蝶のように小さくてかわいらしい姿をしています。ガイドさんもハチドリジュース入れを購入しロスの自宅に設置したのですが、ハチドリ達はまったく利用してくれないそうです。ホワーイ?

95号線と191号線のぶつかる丁字路は、大きな地図に主要道として赤線で載っているとはとても思えないただの田舎道で、傍らのCHEVRONで給油しました。道路の向かいにはお馬が売られていましたが、私の好きなアメリカンペイントホースはいませんでした。コンタクトがぱりぱりに乾いてしまって「つーかーれーたー!」と連発したことをここにお詫び申し上げます。ゴメンネ、親方、ガイドさん。

ここからメキシカンハットまでの191号線の道のりは、97年のアメリカ大陸横断の時に走った道だったので、走りながら前の旅の記憶がよみがえって来ました。前に立ち寄ったガススタンドや、ツインロックを見てカンゲキ。インディアンジュエリーやアンティークを売る店が街道沿いに多く、一軒だけでものぞきたかったなぁ。

ついにメキシカンハットの名前の由来である、テンガロンハットを誰かが逆さに置いたような奇岩が見えた!やった〜〜〜!!!

本日の宿は、Canyon Land Motelというところで、とてつもなく古そうなところでした。出入口はガラスのサッシ窓(!)で南京鍵をかけるのですが、普通のドアの部屋もあり、室内にも閉鎖されたドアがありましたので、昔は広かった部屋を小分けにして営業しているのだと分かりました。エアコンは見たところ換気扇しかついていないようでしたが、換気扇の外は水で濡らしたワラのようなものが被せてあってちゃんと冷気が出ました。原始的なクーラーですね。ベッドに寝転ぶとこの部屋に泊まったであろう何千人もの人々を想像せずにはいられませんでした。ちょっとブキミでしたが、フツーの旅ではないのでこんな宿もよしとしました。

日が傾いてきたので、急いでトラックに乗り込みました。フリーダムアメリカならではのオプショナルツアーに出発です。うーん、車ってラク〜。最初に奇岩メキシカンハットに近寄り、記念撮影。その後Valley Of Godに向か いました。God Handと呼ばれる人の手そっくりの形をした奇岩のあるところです。ガイドさんのトラックはスピードを上げて神の谷を駆け抜けます。神様はいる、いないではなく、この大地そのものが神なのだと考えるのが自然に思えます。

西日が強く照らし、逆光だと一瞬視力が失われるほどです。サングラスも意味がないくらいの強烈な太陽に向かって、今度はビュートを登り始めました。

「神の園」というインディアンの聖地へ向かって、トラックはうなりを上げます。前回来た時は、仲間のひとりがインディアンフルートを奏で、刻々変化する空と大地の色に心打たれ時を経つのも忘れて、皆無言で真暗になるまで座っていたものです。あの感動を再び親方と共有したいとずっと思っていました。

道は7年前よりはかなり良くなっていて、先客のキャンピングカーがいました。ガイドさんには申し訳ないけど、よく冷えたブルーリボンというビールで親方と乾杯し、辺りを散策しました。ビュートの窪みに雨水が溜まり、おたまじゃくしのような生き物が泳いでいました。このような砂漠の水溜りの中でなんというはかない命なのでしょう。

再び車に乗り込みポイントを移動しました。岩と岩の隙間を通り抜けかつて仲間と座った場所を7年ぶりに訪れました。親方は重力から開放されたような顔をして伸びをしていました。そしてスゴイ、スバラシイを連発していました。ガイドさんもツアーで何回も来てるけど、「神の園」は飽きることがないと言っていました。帰り道は親方とトラックの荷台に乗って暗い山道を下ったのがスリリングでした。 本当に来て良かった。ガイドさん、案内ありがとう。

晩御飯は、メキシカンハットロッジのステーキです。前回も来たけど、ここは本当に雰囲気がいいのです。ブランコステーキを焼くおじさんも変っていませんでした。持参したしょうゆをかけて大量のステーキを全部食べました。部屋に戻ると、一日の疲れがどっとでてまるでバイクの振動で頭蓋骨の中の脳みそをシェイクしたみたいに目がまわったのですぐ寝てしまいました。

親方とガイドさんが外で飲みなおしていると、やせネコがやってきてガイドさんの足にすりすりし、ノミをうつしましたとさ。

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