By Kaori T.
09/17/2002
朝の気温4度。宿の傍にある沼の表面は靄がかかっていた。

シーニックルートをデュランゴの街へ。西部劇の映画の香りがするウェスタングッズの多い町は、一度訪れたら、誰もがもう一度来たくなる雰囲気が漂っていた。

山岳の乾いた岩盤に集落を造り、高度な文明を持ちながら忽然と姿を消したインディアンの集落”メサベルデ”国立公園でランチを済ませ4つの州が交わる”フォーコーナーズ”を目指す。ここで2度目の難関に出会う。

ルートUS160を南下。これからタイヤが噛もうとしているアスファルトには暴風と共に多量の砂が凄まじい勢いで吹き込んでくる。ファットボーイのシートに跨がったまま首を引っ込めた亀みたいになっているしかなかった。機能しているのはグラスとシールドの向こうにいつ開けるか分からないベージュの砂のカーテンの中で見失ったセンターラインを探す目と風圧の強弱でアクセルを握りしめる右手だけ。スピードは50マイルで精一杯。バチバチと足や身体に石と砂の攻撃を受けてバラバラになりそう、、、。

痛〜い!突風を受け続けているマシンは傾いたまま。体重移動しながらバランスを取るしかない、、、。、、、ここを抜けるしかないんだから、、、横断2度目のハザード点灯。 それでも走らなければ、止まれない。風防の付いたマシン組は遥か遠くに、、、。

4コーナーズに着いてメットを取った時の顔はなかったろうね。スタッフの宮田氏曰く「いつもはこんな風じゃないよ」

4コーナーズのスナップ写真は3枚だけ。1枚は十字路に立つショット。そして残りの2ショットはマシンを降りた私に近付いてきた犬。砂風を浴びながらも風上を向き続けていた。それが妙に愛おしく感じたから、、、

さらに30マイル程、砂風と戦いながら進む。ルートUS191北上。この辺りでおさまってきたけど、長時間緊張がすぐにはほぐれてこない。全身の力が抜けたのはメキシカンハットの宿に到着し、マシンのスタンドを出した時。”ホーッ”。凄かった。これが大陸横断の本来の姿なのか!それにしてもこんなにボロボロになるまで、、、もう、仕返しとばかりにモーテルの丸木柱がサンドバックと化す。

スタッフの永田氏が太陽に拳をかざしている。皆集合してトラックの荷台に乗り込み、赤く燃えるような岩肌の中を進む。しばらくゆられて荷台から降りると、そこは地球じゃなかった。 遥か彼方まで続く地層岩、断崖絶壁。深い峡谷。とてつもないスケールで圧倒する。

人間は無力だわ
ここに座っているとそう思う
これ見よがしの創造物を生み出しては
得意になっているけど
其の足元にも及ばない

むき出しの地層の岩肌を這い上がってくる風が
全ての抵抗行為を吹き払う
テーブルンマウンテンの割れ目に立つ
その一瞬、風が止まる
呼吸も止まる。地球の静寂を聞く

この時空間はいったい何だろう
大陸のミクロの単位に絡みつくように
魂が深い谷に落ちていった。
人間の存在自体おろかなことかも知れない
なのにあまりにも
傷つけたものが多すぎたね、、、

ゆっくりと静かに
太陽は沈んでいく
最後の弧が地平線と重なった時
底光りが走った

帰りは助手席に乗るかい? と聞いてくれたけど、やっぱりトラックの荷台を選んだ。車は荒いダートをゆっくり走ってくれたけど、時々”ドスン”と大穴にはいり、体は大揺れするトラックの荷台は夕暮れの特等席ね。しだいに闇に包まれていく中、月光が輝き始めながらずっと私についてくる。”ツクムカリ”でスタッフの永田氏が「ロスにつく頃は満月だね」と言っていた。本当にそうだわと思いながらトラックのタイヤがゴロゴロと石を噛む音が遠ざかってゆく。昼間の砂嵐でちょっと疲れたかな、、、どうやら寝てしまったらしい、、、「着いたよ」。四つん這いになって荷台の端まで這っていったら誰かが降ろしてくれた。「ここは何処」聞いた時皆が笑っていた。やっと意識が戻る。夕食です。

 
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